ストーマケアに関して医療行為か否かの問題について 
ストーマ用パウチの交換(張り替え)ついては、これまで医療行為(医行為・法律用語では医業)という意見が多く家族以外はヘルパーさんや一般の方ができない状態が続いてきましたが、平成23年7月14日の厚生労働省老健局からの通達で、例外的な場合を除いてはストーマパウチの張替は医療行為には当たらないであろうとの正式見解が発表されました。
しかし、間違ったとらえ方をされている方もおられるようですので、説明いたします。
そもそも医療行為とは 
 医師法の第17条に医師でなければ医業を行ってはならない。 というのがあります。ではどのような行為が医業に当たるのかについては具体的にも、大まかにでも一切書かれていていません。結果について責任を問われる法律は刑法等がありますが、行為自体を禁止する法律は医師法の17条と歯科医業における歯科医師法17条のみです。判例では一般的には医業は、医師(医師の専門知識を持って)でなければ人体に危害を及ぼす危険性のある行為、それを反復継続する意思をもって行う事、 例外として家族が行う場合と緊急の場合はこれに当たらないと理解されている場合が多いのですが、法律で明文化されたものではありませんので、各事例で裁判の結果が出ないとはっきりしません。緊急の場合とはどの程度の緊急性か、家族の範囲は、またどの程度の行為であれば医師が医師以外のスタッフに支持して行わせることができるのか、危害を及ぼすとはどの程度の危害なのかという点については具体的な資料がありません。これは医師法が改正されてそうなったのではなく、昭和30年の最高裁判所の判例によりその考え方が定着したようです。
法律が変わったのか 
 法律や法令が変更されたわけでは有りません。本来、厚生省や厚生労働省からストーマパウチの交換が医療行為に当たるとの通知や官報はいっさい出ていません。日本オストミー協会の全国大会で厚生労働省の担当者が医行為に当たるのではないか、というような発言はあったようですが、それはあくまでも個人的見解と思われます。また、ツーピース装具のパウチの交換だけは医行為に当たらないとの通知もありましたが、それはあくまでも断言できる範囲で医行為ではないとの見解を出したのであって、面板の張り替えが医行為に当たるという趣旨の正式な文書は有りません。
 日本は法治国家で法律のもとですべてのことが判断されますので、厚生労働省としても勝手に医療行為であるとかないとかを決めることはできません。唯一裁判所が決めることができますので、前期の問題などは裁判にかけられないと白黒はつけられません。7月14日の厚生労働省から出た通達もあくまでも見解にすぎません。医師法には何も書かれていませんし、そのあと改正された形跡も、改正されそうな予兆もありません。
 インターネットでいろいろ調べると、裁判で医業か否か争われた判例を探すことができます。それを見ると医業と判断されたものは、それなりに危険そうな行為で(有罪になった事例は実際に健康被害が何例も出たケースが多いようです。)、ストーマパウチの交換とはレベルが違うように思います(あくまでも私個人の感想ですが)。
 ともあれ、厚生労働省が医業ではないと判断できるであろうとの正式見解を出してくれたという事は、闇夜に光明が見えたようなものです。これでヘルパーさんも安心してストーマケアができます。ただ、医行為ではないにしても一般に経験の多いことではありませんので、若干の専門知識は必要です。そうでないと皮膚トラブルを起こしたり、患者さんの信頼を失ったりという事がないとも限りません。また、非常に管理の難しいストーマをお持ちの方もおられます。そういう場合は、厚生労働省の通知の通り訪問看護ステーションのナースの方や手術を受けた病院と連携をする必要があると思います。在宅のストーマケアにおいては、セルフケアが不可能な場合は病院・訪問看護ステーション・ヘルパーステーションの連携が重要になってくると思われます。
もし万が一、医療行為としたら
ヘルパーさんは出来ないけど看護師だったら問題ないと思われる方もおられると思いますが、それは違います。医行為は医師の資格でしか行うことはできませんので、医師の指示がない限りどんな経験豊富な看護師さんや医師以外の医療スタッフであっても勝手に行うことはできません。医師法違反で逮捕されてしまいます。たとえばWoc(皮膚排泄ケア認定看護師)の方が患者会に参加してトラブルを持つオストメイトの相談で、適正な装具を選んで貼ってあげるというような行為は、医師が同席している場合は指示を仰げますが、いない場合は無理という事になります。ちょっとした行為でも医師の管理下で行わなければならないとなったら、医師の仕事はますます増えるばかりです。困った問題だと思いませんか?
 
何が原因で医療行為とされてきたのか
何が原因かはよく判りません。ずっと以前は洗腸療法の指導は医療行為に当たるかもしれないので勝手に指導したりしたら医師法違反になるかもしれないとは言われていました。主治医から許可を受けて、医師か看護師さんに立ち会ってもらって一緒に教えながら練習してもらうというやり方でした。洗腸の場合は、術後で体力が回復しきっておらず、途中で気分が悪くなったりという事もたまにありますので、たとえ医療行為に当たらないとしても立ち合いなしでは怖くて、という感じです。
 それがいつの間にかストーマパウチの張り替えも医療行為との雰囲気になり、ひどい場合などは相談だけでもそれにあたるとの考え方をする人も。
 原因についてはよくわかりませんが、ひょっとしたらこれが根拠になったのではないか、と言うのは有ります。それは平成元年の厚生科学研究で出された「医療行為及び医療関係職種に関する法医学的研究」という報告書です。前述したように医師法では医業(医療行為・医行為)について何の定義も補足説明もありません。そのため医業を定義し、範囲を明確化するための研究レポートです。
それでは、医行為は絶対的医行為と相対的医行為に分類されます。絶対的医行為とは医師が直接行わなければならないような高度な技術や知識を要するもの。相対的医行為は医師以外のスタッフに指示して行わせる事ができるものです。相対的医行為はさらに具体的な指示が必要なものと、包括的支持でよいものに分かれます。このレポートでは包括的支持による医行為の具体例に人工肛門管理やネブライザー、包帯交換、褥瘡管理が含まれています。
これはあくまでも研究レポートですし、この後厚生労働省の政令や医師法に変化を与えたという状況や事例は見当たりません。ただこの事が独り歩きをしてしまったのではないかと思います。周囲の損得勘定や、思惑がそれをサポートしてしまったのでしょう。
これから
厚生労働省から正式な通達が出されてから、徐々にですがホームヘルパーさんに対してのストーマケア講習会が全国各地で始まっています。ストーマ増設の手術を受ける患者さんたちの高齢化が急激に増してきて、セルフケアが不可能な事例はどんどん増えています。また、その事によって管理が困難なストーマの事例も増えているように思います。交換の頻度の関係で、介護保険の訪問看護ステーションでの対応では追いつかない事例も出てきているようです。病院・訪問看護ステーション・ヘルパーステーションのタッグがますます必要になってきます。やりたくないというヘルパーさんも実際いるようですが、学会とかの発表を聞くと7割を超える方がやりたい、或は勉強する機会を与えてもらったら是非やりたいと思われているようです。 
医療行為(正確には医業)を行う事が許されるのは医師免許を持った人のみです。
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医師法について
 医師法の第17条に、「医師でなければ医業をなしてはならない」とあります。また歯科医師法でも「歯科医師でなければ歯科医業をなしてはならない」とあります。いわゆる免許を持たない人の医療行為(医業)を禁止している法律はこれらだけです。医師免許を持っているからと言って”歯医者さん業”をやったら医師でも違法行為になってしまうわけです。反対に歯科医師でも同じです。しかし、医業とは、また歯科医業とは、どんな行為を示すのかは詳しくどころか、何にも記されていません。
 例えば、漁業だと漁業法があり、その中の細かい内容については各県の漁業規則に関する条例などで、非常に細かく決まっています。例えば佐賀県だと釣りによる漁法だと漁業権は必要ありませんが、投網だと漁業権の許可を県知事から得なければ密漁になってしまいます。福岡県だと、タコ漁は一般的には釣りでの漁は漁業権は必要ありませんが、関門海峡周辺では漁業権なしではとってはダメです。
 医師法の場合も厚生労働大臣が細かい規則を制定できるような決まりがありそうなものですが、医師法の場合はそれがありません。したがって厚生労働省のどんな部門も大臣も医業の内容については決める権限はありません。決めれるのは裁判所だけです。しかも個々の事例についてのみです。実際官報で厚生労働省が医業として禁止した事例が実際の裁判では医業ではないとされた例もあるそうです。
 ストーマ交換については、厚生労働省からも通常の場合は医業には当たらないであろうとの見解が出ていますが、法律は医師法だけではありません。重大な結果を招いた場合は重過失傷害罪や傷害罪などに問われる場合もあります。お医者さんですら医療ミスや無謀な挑戦をし失敗した場合は、法の判断にゆだねられる場合もあります。仕事であろうがボランティアであろうが結果に対しては責任を負わされるという事だと思います。
 やはり、医療行為(医業)でなくても、一般的常識や業界のガイドラインのようなものに沿って行ったほうが安心では、と思います。